『出前牧師カンちゃん』
2008年4月から 「出前牧師カンちゃん」 という名前で、福音の伝道を始めました。あなたはきっと、 「なぜこんな名前をつけたの?」 って、質問したくなるのではないでしょうか。
1、 「道路の草むしり」から「そば屋の出前」へ
初めてしたアルバイトは、幹線道路の草むしりの日雇いの仕事でした。仕事を終えて帰って来ると、排気ガスで顔中真っ黒になりました。草むしりをしながら、こんなバイトをするよりも、自分が持っているバイクの免許を生かした仕事がしたいと考えました。
アルバイトニュースで、おそば屋さんの出前の仕事を見つけました。時給800円、食事つき、交通費全額支給。16歳の私には、まあまあの条件でした。早速バイクに乗って、そば屋の出前のバイトをはじめました。東京の鮫洲にある運転免許試験場が近くにありましたので、そこにもよく出前をしました。
ある日、試験場に出前に行った帰りに、強引に献血のお願いをされました。私は良いことだと思って、快く引き受けました。 「ずいぶん遅かったけど、何かあったの?」。 店に戻ると、店長から聞かれました。 「献血を頼まれたので、献血してきました」。 私は正直に話しました。
2、 「魚屋の出前」へ、そしてまた「そば屋の出前」へ
初めのうちは落ち込んで、自分を責めたりしましたが、しばらくして立ち直り、今度は、六本木の麻布十番の魚屋さんの出前をしました。魚屋の仕事はとても忙しく、約1ヶ月後に、 「君は仕事が遅いから辞めてもらう」 と、言い渡されました。また首になってしまいました。のんびり気分で仕事をしていましたので、他のバイトの人と比べて、仕事のスピードがだいぶ遅かったのだと思います。
しばらくは落ち込みましたが、また気を取り直して、今度は、虎ノ門のおそば屋さんの出前をはじめました。ここの店長は私をかわいがってくれましたので、とても楽しく仕事をしました。近所にあったテレビ東京の芸能人や歌手の楽屋から注文が入ると、率先して出前をしました。また、バイトが楽しかったので遠くの出前も率先して行いました。
3、 今では、「出前牧師カンちゃん」へ!
それから約20年が経過し、今では 「出前牧師カンちゃん」を名乗って、牧師の出前をしています。先日、大阪のラジオ番組に出演しましたが、 「出前牧師」 という発想がとてもユニークだと言われました。 「出前牧師」とは、一体何を出前するのでしょうか?
人が訪ねてくるのを待っているのが普通の教会です。また、多くの教会は日曜日しか開いていません。 1年365日、1週間7日、1日24時間開いているオープンな教会があったらいいなあと思う人がたくさんいることでしょう。本当はそれが教会のあるべき姿なのです。
「教会で待っているのではなく、自分から人々のところに出て行って、『福音の出前』をする牧師になったらどうだろうか?」。 ある時こう考えました。こうして今では、1週間のうち6日間は出前牧師をしています。早朝に、最寄りの駅を順番に回り、駅前に立って、福音文書を配布します。 「おはようございます!」。 明るく大きな声であいさつをして、短いメッセージをします。
最初のうちは、誰からも相手にされませんでした。でも、週1回は同じ駅前に立っていますので、乗降客のみなさんが 「出前牧師カンちゃん」 を好意的に受け入れてくれるようになりました。聖書について質問されたり、悩みごとを相談されることもあります。何十人もの方が、私を訪問してくれたり、私の教会の礼拝に参加してくれるようになりました。
4、 洗礼式を「マック」で!?
『全世界に出て行き、すべての造られた者に、福音を宣べ伝えなさい』 (マルコによる福音書16章15節)。 聖書にはこう書かれています。 「あなたは人々の中に出て行って伝道しなさい」 ということです。ですから、私は駅前に出て行って、通勤する方々に福音を毎日お届けしています。
そこで、 「教会には行きにくいけど、牧師に自分の悩みを相談してみたい」
という人に出会います。その人と一緒に、焼肉屋、ファミレス、ハンバーガーショップや喫茶店に行ってお話しします。
ひたすらその方の悩みや相談ごとに耳を傾けます。全部聞いた後で、私なりの考え方を聖書から語ります。 「えっ!? 聖書にはそんなにすばらしいことが書かれているのですか?」。 驚いて聞き返してきます。中には、 「そんなにすばらしい神さまなら、私もイエスさまを信じたい!」と言ってくれる人もいます。
さらに驚くべきことが起きることがあります。 「今ここで洗礼を受けてもいいでしょうか?」
と言う人までいるのです。すぐにウエイトレスに水を持ってきてもらって、その場で洗礼を授けます。昨年末は、新大久保の焼肉屋さんで洗礼式を行いました。
先日も、お茶の水のマックでハンバーガーを食べながらお話していた相手の人が、 「今、洗礼を受けたい!」 と言うので、その場で洗礼を授けました。側にいた見ず知らずのお客さんがそれを見て感動し、 「これ、お祝いです。食べてください!」 と言って、アップルパイをプレゼントしてくれました。そのお客さんは、クリスチャンではありませんでした。
「イエスさまを信じて、洗礼を受ける」 ということは、それほど感動的ですばらしいことなのです。 「神の永遠のいのち」 を授かり、 「天国行きのパスポート」 をいただくことなのですから。
5、「マック」が教会?
「○○教会」
という看板はついていませんが、そこは教会と同じなのです。 『教会』 と訳されている聖書の言葉のギリシャ語原語は、 『エクレシア』です。 『神から選び出された者の集まり』 という意味です。つまり、神を信じる人と人の繋がり、人々の集まりが教会なのです。
ですから、レストランでも、喫茶店でも、家庭でも、神を信じる人々が2、3人集まって、聖書のことを語り合うならば、そこがそのまま 「教会」 です。私は福音を出前しているだけではなく、出前先で教会の働きを行っていることになります。出前先で、聖書のことばを語り、洗礼を授け、病気がいやされるように祈ったりしているからです。
6、 あなたの過去はすべて生かされます
幼い頃病弱だった私は、今、 「いやしの働きをする牧師」
となっています。宗教的、律法的に親から信仰を押し付けられて反発していた経験が、今、 「自由と愛に生きる牧師」 となっています。
いじめられっ子といじめっ子の両方を経験した私は、その両者の気持ちを理解し、 「いじめに苦しんでいる人たちを助ける牧師」になっています。私は自殺寸前にまで追い込まれましたが、「自殺したい人を救う牧師」となっています。
20歳の時、芸能界にスカウトされそうになった私は、その時、歌手になる道をあきらめ、神さまの導きに従って牧師になりました。今の私は、毎週の礼拝や数々の大きな集会で賛美をリードし、月に何度かは駅前で路上ライブをする、「演奏しながら歌う牧師」となっています。
かつては、そば屋や魚屋の出前をしていましたが、今、 「出前牧師カンちゃん」 を名乗って福音の出前をしています。
こうして、私の過去は何一つむだではなく、すべての体験が生かされていています。神さまによって私はすばらしい人間として造られ、神さまから私はあるがままで愛されていることを、日々発見しています。
7、 あなた自身のすばらしさに目覚めましょう!
聖書によると、神さまに造られたあなたは、特別な個性を持ったすばらしい人なのです。自分を人と比較する必要はありません。バラにはバラの美しさがあり、ひまわりにはひまわりの美しさがあり、桜には桜の美しさがあります。あなたが本物のあなたであるからこそ、本当にすばらしいのです。
私はアメリカの神学大学を卒業して博士号まで取ったのですが、実は英語がからきしダメなのです。そんな私ですが、ある時大学の英語のスピーチコンテストに挑戦しました。初めからしどろもどろで、途中から必死で身振り手振りのボディランゲージになってしまいました。もう汗だくでガンバリました。私の英語のあまりのヘタさと私のボディランゲージのあまりのコッケイさに、会場は、爆笑に次ぐ爆笑でした。
当然ビリで失格だと思いました。ところがです。そんな私が、なんと、そのコンテストで優勝してしまったのです! まさかと思い、心から驚きました。英語がヘタなために、私の特別な個性が生かされて、それがかえって「すばらしい!」と評価されたのす!
ですから、人と競って 「ナンバーワン」 を目指すこともよいことですが、それよりも、 「オンリーワン」 を目指した方がいいですね。本来のあなた自身になり切っていくことが、あなたの本当のすばらしさです。
「自分が自分であること」 に生きがいを見出すことができたら、こんなにうれしいことはありませんよね。これまであなたが歩んできた道の中にヒントがあると思います。あなたの過去は、すべて生かされます。
あなたは、 「特別にすばらしい人」 として造られています。そのすばらしさを通して、神さまは、あなたに自信を与え、過去の傷をいやし、やりがいと生きがいを与えてくださいます。あなたは愛されるために生まれたのです。
あなたは幸せになるために生まれてきたのです。かつては劣等感のかたまりだった私は、今、自分の個性に目覚めて本当に幸せです。どうか、あなた自身の特別なすばらしさに目覚めて、あなたも幸せになってください。
2008年5月
「出前牧師カンちゃん」
こと 菅野 直基